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2003年からの読書日記

夏の庭―The Friends (新潮文庫)作者: 湯本香樹実出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1994/03/01メディア: 文庫購入: 37人 クリック: 244回この商品を含むブログ (248件) を見る

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今月の1冊にもなっていたし、今年こそ夏に読もうと思っていました。
読めてよかったです!
ネタバレはしていないと思いますが、未読の人は先入観なしで読んだ方がいいかも。

小学6年生の仲良し3人組、木山、河辺、山下が一人の老人を観察し始めます。
なぜなら、そのおじいさんが死ぬ瞬間を見たいから。
もうじき死ぬと噂されているおじいさんでしたが、こっそり観察を始めた3人の願いとは裏腹に日々元気になっていくように思えて・・・
老人と小学生のひと夏の交流を描いた物語です。

生と死のこと、自分の子ども時代のこと、周りの大切な人達のことを考えながら読みました。
自分の亡くなった祖母のお葬式や思い出もよみがえってきました。

人は誰でも生まれたら必ず死ぬと決まっているんだけれど、普段私たちはそのことを忘れて(考えないようにして)生きています。
この主人公達のように「死ぬのは怖い、死んだらどうなるんだろう?」と子どもの頃はよく考えていたなと思い出しました。
木山のように夜なかなか眠れないことも多かったです。

今の私ももちろん死ぬのは怖いですが、自分の大切な人が増えた分、その人達が死ぬことの方が怖い気がします。

人が亡くなっても思い出は残る。
でもきっとその人がいなくなった寂しさは消えないでしょう。

木山達はおじいさんと深くかかわることで、たくさんのことを学んだのだと思います。
人が死ぬということをリアルに感じられなかったのは、まだ身近な人や深くかかわった人が死んだ場面に遭遇しなかったからでしょうか?
おじいさんとのあたたかい交流ができた時・・・皮肉な結末だなと思いました。

読後にじんわり涙が出そうになりました。
大人になっても十分楽しめたけれど、小学生の頃に読んでみたかったです。


印象に残った文章を抜粋しておきます。

>「死んでもいい、と思えるほどのなにかを、いつかぼくはできるのだろうか。
たとえやりとげることはできなくても、そんななにかを見つけたいとぼくは思った。
そうでなくちゃ、なんのために生きてるんだ。」

「もしかしたら、歳をとるのは楽しいことなのかも知れない。
歳をとればとるほど、思い出はふえるはずなのだから。
そしていつかその持ち主があとかたもなく消えてしまっても、
思い出は空気のなかを漂い、雨に溶け、土に染みこんで、生き続けるとしたら・・・
いろんなところを漂いながら、また別のだれかの心に、ちょっとしのびこんでみたりするかもしれない。
初めて来たところなのに、来たことがあると感じることがあったりするのは、そんなだれかの思い出の、いたずらなんじゃないだろうか。」

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じゅりん > トントンさん、はじめまして♪私もちょっと前に読みましたが、↑でも抜粋されている「死んでもいい、と思える〜(略)〜なんのために生きてるんだ。」の文章には、大人の私の胸にもズシンを響いたのを憶えています。こういう胸が熱くなるような文章との出会いって素敵ですよね!読書が趣味で良かった・・と思える一瞬です。 (2005/08/19 08:11)
ケイ > こんにちは〜この本、ほんとにいいですよね。少年小説?という分野で、、おすすめですよね。。文章も自然で、いいな。いい読書ですよね。 (2005/08/19 10:43)
そのみ > トントンさん、こんにちは。私も最近読みました。トントンさんが抜粋されたところ、私もとても気に入りました! 子供らしい言葉なのに、大人が読んでも(あるいは大人が読んだほうが)心にぐっとくるんですよね。 (2005/08/19 15:44)
ミワ > そうそう、印象的な文章がたくさんありました!主人公がいろんなことを考え、知っていくことをともに共通体験していくような読書でした。いい本ですよね。 (2005/08/19 21:31)
トントン > じゅりんさん、はじめまして。前からずっと読もうと思っていたのですが夏に読めてよかったです!じゅりんさんのおっしゃる「胸が熱くなるような文章との出会い」本当にいいですよね♪これが楽しみで読書しているのかもしれないと思います。
ケイさん、こんにちは!本当にいい読書でした。自然な文章なんだけど心に響くんですよね♪ケイさんがまた戻ってこられるのを楽しみにしてます!
そのみさん、こんにちは。お互いちょうどいい時期に読めましたね♪子ども時代を通り過ぎた大人だからこそ心に残ることもあるんでしょうね。今回読めてよかったです!
ミワさん、本当に主人公達と一緒に体験していくような感じでしたね。夏といえばこの物語を思い出すようになりそうです。 (2005/08/20 14:24)