はぴの本棚

2003年からの読書日記

樽とタタン作者: 中島京子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/02/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る

小学校の帰りに毎日行っていた赤い樽のある喫茶店
わたしはそこでお客の老小説家から「タタン」と名付けられた。
「それはほんとう? それとも嘘?」常連客の大人たちとの、おかしくてあたたかな会話によってタタンが学んだのは……。
心にじんわりと染みる読み心地。
甘酸っぱくほろ苦いお菓子のように幸せの詰まった物語。

中島京子さん、久々に読みました。
「樽とタタン」もそうですが、各章のタイトルも一風変わっていてひねりがある感じ。
読み終わってタイトルを眺めると「そういうことか!」と分かるのが楽しかったです。

「ずっと前からここにいる」「ぱっと消えてぴっと入る」が特に印象に残りました。

私が子どもの頃よりもう少し前の時代の物語ということで、ちょっと懐かしい気がしました。
小学生時代の遠い記憶が浮かんできたり、長女が幼稚園の頃、ちょっとタタンみたいだったなと思い出したり・・・

今はカフェが多いから「レッド・バレル」みたいな喫茶店は貴重な存在でしょうね。
タタンの居場所がここでよかったと思います。

個性豊かな常連客も魅力的でした。
居心地がいい場所には自然と人が集まってくるのかも。
干渉しすぎない絶妙な距離感がいいなと思いました。
こっそり客の中に混ざってコーヒーを飲みながら皆の話に聞き耳を立てるのも楽しそう(笑)

タタンが当時を振り返る最後の章も好きです。
「レッド・バレル」がなくなってしまっているのは寂しいけれど、思い出はその人の心の中にずっと生きているんだなと温かい気持ちになりました。