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2003年からの読書日記

長いお別れ作者: 中島京子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/05/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る

帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。
妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。

東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、十年ほど前から認知症を患っている。
長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、娘が三人。
孫もいる。

“少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症
ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう、迷子になって遊園地へまよいこむ、入れ歯の頻繁な紛失と出現、記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、終末のひとつの幸福が描き出される。
著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集。

認知症の話だとちらっと聞いていたので、かなり重い内容ではないかと思って手に取るか迷いました。
でも、母がとてもよかったとすすめてくれたので思い切って読み始めたら一気に惹き込まれました。


たしかに重いけれど、その中にもクスッと笑ってしまう場面やしみじみ温かい気持ちになる場面、深く考えさせられる場面など色々感じることのできる読書になりました。

タイトルの「長いお別れ」の意味はなるほどと思いました。
あとQOLは知っていましたが、ADLは初めて聞いたので勉強になりました。
昇平の死は突然でややあっさりしていたけれど、実際亡くなる時は唐突でそんなものなのかもしれない・・・

三人の娘達も離れていてもいざとなったらそれぞれの立場でできる限り両親を支えようとする気持ちも感じられてよかったです。

一番印象に残ったのは昇平・曜子夫婦の絆の強さ。
最後まで仲良しの素敵な夫婦だと思いました。

そこでふと感じたのは、もし高齢になった私が将来夫を介護することになったら、曜子のように最後まで全力で夫を支えることができるだろうか?ということ。
自分達夫婦のこれからの年月をもっと大事にしたくなったし、絆を深めていきたいと思いました。


夫の両親は70代前半、実家の両親は60代半ばなので、認知症や介護の話は私にはまだ遠い先にあるぼんやりしたもののよう。
でも、あと5年、いや10年したらかなり身近な問題になってきそう。
今読めてよかったです。