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2003年からの読書日記

かたづの! 集英社文芸単行本作者: 中島京子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2014/11/07メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る

慶長五年(1600年)、角を一本しか持たない羚羊が、八戸南部氏20代当主で ある直政の妻・袮々と出会う。
羚羊は彼女に惹かれ、両者は友情を育む。
やがて羚羊は寿命で息を引き取ったものの意識は残り、祢々を手助けする一本の角――南部の秘宝・片角となる。
平穏な生活を襲った、城主である夫と幼い嫡男の不審死。
その影には、叔父である 南部藩主・利直の謀略が絡んでいた―。
東北の地で女性ながら領主となった彼女は、数々の困難にどう立ち向かったのか。
けっして「戦」をせずに家臣と領民を守り抜いた、江戸時代唯一の女大名の一代記 。


中島京子さん初の歴史ファンタジー小説とのことで楽しみにしていました。
なんとも不思議なタイトルですが、読み始めるとすぐに意味が分かります。


どこまでが本当でどこまでが創作なのか?史実とファンタジーのさじ加減が絶妙!
序盤から最後の最後まで袮々の波乱万丈の人生に目が離せませんでした。


羚羊、河童、ぺりかん、大蛇など謎めいた生き物が登場して違和感なく溶け込んでいるところが面白い。
東日本大震災が起きる400年前の慶長16(1611)年に三陸津波があったこと、経立(ふったち)など初めて知ることも多かったです。


袮々が孫の妙に語る言葉が一番印象に残ったのでメモしておきます。

>「〜不幸や禍はいつだって、あなたを丸ごと呑みこんでしまおうとするのです。けれども、あなたを呑みこもうとする禍が降ってきたときには、ただただそれに身をゆだねてしまわずに、知恵を絞って考えてください。禍に呑みこまれずに抗おうという強い思いがあれば、必ず、向かうべき道が見えてくるものです。だいじなのは、あきらめないことです」


著者の強い思いを感じました。
これからも色々なことがあるだろうけど、本を読んだ多くの人達がこの言葉に力をもらえる気がします。


袮々の人生は喪失の連続で辛く思うことばかりでしたが、晩年妙との穏やかな日々が訪れたことは本当によかったと思いました。


既読は『小さいおうち』『エルニーニョ』だけですが、やっぱり中島京子さんの小説は魅力的。
これからも少しずつ読んでいきたいです。