はぴの本棚

2003年からの読書日記

天翔る作者: 村山由佳出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/03/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る

天に向かって走る。ただ一途に、光を求め――その牧場には、かけがえのない何かを喪った人たちが集まっていた。傷つき居場所を失った一人の少女が、馬と出会い、その才能を開花させてゆく。ひたむきに生きる人々の間に紡がれるたしかな絆と、命の輝きを描き出す感動の長編小説。看護師の貴子が出会った少女、まりもは、ある事件から学校に行けなくなってしまった。貴子は少女を牧場へと誘う。そこで待ち受けていたのは風変わりな牧場主と、乗馬耐久競技(エンデュランス)という未知の世界だった――。北海道の牧場を舞台に描かれる命の輝き。底知れぬ感動をよぶ、祈りと希望の物語。


村山由佳さんの作品は2004年に『すべての雲は銀の… Silver Lining』を読んだきり。
以前ご本人がラジオ番組のゲストでこの本の紹介をしていたのを聴き、久々に手に取りました。


感情移入しながら一気に読みました!
まりもは幼い頃に母が出て行ってしまい父と祖父母と暮らしていましたが、父が不慮の事故で亡くなり、いじめを受け不登校に・・・とかなり辛い状況なので最初の方は読んでいて涙が出てしまいました。
でも貴子や志渡、エンデュランス競技と出会ったことで自分の居場所ができ少しずつ癒されていきます。


貴子や志渡、漆原など大人も過去の傷に苦しんでいます。
だからこそまりものことを丸ごと受け入れ、優しいのでしょうね。
結局、傷ついていない人ってあまりいないのかも。
年や性別関係なく心でつながることができる大切な人達がいることはとてもいいなと思いました。


エンデュランスという乗馬耐久競技があることは全く知りませんでした。
テヴィス・カップは、24時間以内に100マイル(高低差の激しい山岳コース)を走破するとのことでかなり大変そう。
各所で獣医師が馬の健康診断を行い、競技を続行できるかチェックすることや完走することに意義があり、10位以内から最も体調の良い馬を選びベスト・コンディション・ホース賞が授与されます。
日本ではまだマイナーなようですが、馬と人との信頼関係がより大切なフェアな競技というのがとても魅力的でした。
村山さんご自身が乗馬をされていてエンデュランスも体験されたというだけあり、描写がとてもリアルに感じました。


村山作品には「白村山」と「黒村山」があるらしい。
『すべての雲は銀の… Silver Lining』も『天翔る』も「白村山」作品だったのでいつか「黒村山」にも挑戦してみたくなりました。