はぴの本棚

2003年からの読書日記

空白を満たしなさい作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/11/27メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 17人 クリック: 600回この商品を含むブログ (64件) を見る

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ある日、勤務先の会社の会議室で目覚めた土屋徹生は、自分が3年前に死亡したことを知らされる。
死因は「自殺」。
しかし、愛する妻と幼い息子に恵まれ、新商品の開発に情熱を注いでいた当時の自分に自殺する理由など考えられない。
じつは自分は殺されたのではないか。
とすれば犯人は誰なのか、そして目的は? 
記憶から失われた自らの死の謎を追求していく徹生が、やがてたどりついた真相とは……?
ミステリー仕立てのストーリーを通し、自殺者3万人を超える現代の生と死、そして幸福の意味を問う傑作長編小説!


平野啓一郎さん。
デビュー作『日蝕』がいきなり芥川賞を受賞したのは記憶にありましたが、なんとなく哲学的で難しい本を書く人というイメージがあり、これまで読もうという気持ちがなかなか湧いてきませんでした。

今回手に取ることになったのは「分人」という考え方に興味があったから。
さらに著者が自分と同い年だと知って、親近感も湧きました。
分厚い本でしたが、読み始めたらミステリーっぽいところもあってすごい吸引力!
途中からは先が気になってぐいぐい読めました。


主人公の徹生や周りの登場人物達と一緒に、生と死、自殺について、自分の人生とは?など色々考えさせられる本でした。
一度死んだ人が生き返るって周りの人達にとっては単純にうれしいだけではすまないというのはなんとも複雑な気持ちにさせられました。

自殺する人、しない人、これは本当に紙一重なのかもしれません。
だからこそ、色々な人とのコミュニケーションの大切さを感じたし、分人という考え方は生きて行く上で救いになると思いました。
昔、出家するという考え方が社会的分人を消すことだったのではという話もなるほどと思えるものでした。


最後は徹生もやっぱり消えてしまうのかな?と少し寂しい気持ちになりましたが、希望の見える形で終わっていてよかったです。


ゴッホについて書かれた本も読んでみたいと思ったし、『私とは何か 「個人」から「分人」へ』も機会を見つけて手に取りたくなりました。