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2003年からの読書日記

原稿零枚日記作者: 小川洋子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/08/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 34回この商品を含むブログ (49件) を見る

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最初から一気に物語の世界に惹き込まれていきました。
日記のような小説、小説のような日記?なんとも不思議な雰囲気の作品でした。
読んでいるうちに現実なのか幻想なのか分からなくなっていく感じが魅力的。


淡々としている日常なんですが、苔料理専門店や素寒貧な心の会など独特の小川ワールドが展開します。
現実にはありえないはずなのに、ひょっとしたらあるかもしれないと思ってしまいます。


主人公は女性作家で「あらすじ」の名人ですが、自分の原稿はなかなか進まない日々。
母は入院中、彼女自身は生活改善課の定期的な訪問を受けています。
子どもを亡くした経験があるようで子泣き相撲や小学校の運動会、病院の新生児室などで見知らぬ子を見つめる姿に孤独や悲しみが伝わってくるような感じがしました。


主人公が作家ということでつい著者と重ねてしまいましたが、彼女の一部は小川さんなのかも。


はっきりした結末があるわけではなかったのでなんだか消化不良の読後感でしたが、けっこう好みでした。
本は終わってしまったけれど、読者が読めないだけでずっと彼女の人生は続いていくんでしょうね。