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2003年からの読書日記

妖女サイベルの呼び声 (ハヤカワ文庫 FT 1)作者: パトリシア A.マキリップ,佐藤高子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1979/02/28メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 26回この商品を含むブログ (33件) を見る

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数年前からずっと読みたいと思っていたマキリップ。
やっと手に取ることができました。
本書は世界幻想文学大賞受賞作品だそうです。


出版社の紹介文を転載します。

財宝を集めるドラゴン、聡明な猪、黒鳥……伝説の魔法の獣たちとともにエルドの山深くに住む女魔法使いサイベルは、ふとしたことから王の血を引く赤児タムを育てることになった。
だが彼は成長するにおよんでエルドウォルドの王位をめぐる、愛と憎悪に彩られた争いにまきこまれていく!



主人公のサイベルはもちろん、彼女と暮らす伝説の獣達がとても魅力的でした。
猪のサイリン、ライオンのギュールス、巨大な黒猫モライア 隼のター、竜のギルド・・・想像するだけでワクワク。
最後にサイベルの下した決断、ライラレンの正体など目が離せない面白さでした。


タムやコーレンに出会うことで愛を知り、逆にドリードには強い憎しみを持つようになったサイベル。
白い人、氷の人などと呼ばれ、冷たい印象だった彼女ですが、物語が進むにつれて少しずつ感情が芽生えていく様子は興味深かったです。


一番印象に残ったのはドリードが雇った魔術師ミスランに心(マインド)を変えられそうになる場面。
心(マインド)を変えられるのは死と同じことであり、殺された方がまし・・・自分の一番大切なものなんですよね。
名前が重要という部分はすぐに『ゲド戦記』を連想しました。



すごいと思ったのはあとがきに書かれていたマキリップの筆の魔術。


>この作品の登場人物の容姿外見に関して、具体的な説明としては、目と髪の色くらいしか与えられていないことをすでに読まれた方は気づかれただろうか。

>表情や動作のちょっとした描写、唇や眉の動きの微妙な違い、手の上げ下ろし、息遣いの変化、指輪のきらめきなどが心理の動きを表し、それらが読み進むうちに少しずつ性格を浮彫りにしてくる。


読んでいる時は気づきませんでしたが、描写はかなり抑えられているのにイメージがしっかり浮かんでいることに驚きました。



岡野玲子さんの漫画『コーリング』はこの作品が元になったものだそう。
こちらも読んでみたくなりました。


幻想的で美しい物語世界に描写の巧みさ・・・ついに私もマキリップの呼び声に誘われてしまったようです(笑)
これから刊行順にゆっくり追いかけていこうと思っています。