はぴの本棚

2003年からの読書日記

私の男作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/10/30メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 442回この商品を含むブログ (447件) を見る

以前図書館で予約していたのですが、順番が回ってきたものの結局全然読めず。
再度予約して長く待っていたのでした。


震災で孤児になった花を引き取った親戚の淳悟。
この二人の関係を軸に現在から過去へと物語が巻き戻されていきます。


語り手が章ごとに花→美郎→淳悟→花→小町→花と交代していくのも面白いです。
視点が変わるとその人がどのように周りの人間を見ているかがよく分かりました。
花と淳悟のあまりに親密な関係のからくりもだんだん解き明かされていくので興味深く読めました。



桜庭一樹さんの作品を読むのは『赤朽葉家の伝説』に続きまだ2作目なんですが、ものすごい吸引力を感じます。
読み始めたら一気に世界に入ってしまい続きが気になって本をなかなか置けなくなるのはどの作品にも共通するのかも。


今回はけっこう重くてドロドロした感じを想像して構えていたのですが、ちょっと予想とは違っていました。
殺人、父と娘の世間的には許されない恋愛・・・こうまとめてしまうとたしかに暗く、熱く、重いのですが、読んでいても不思議と嫌悪感はわいてきませんでした。
内容に対して語りが一歩引いた感じといえばいいのか、冷静でひんやりした印象を持ったからかもしれません。



>どこまで陸地で、どこまで海なのか。
 そこは、遠くから見ていたらきっとわからないだろう、この世とあの世の裂け目みたいな場所だった。
 どこまでこの世で、どこからあの世なのか。
 線を引くことは、わたしたち人間には、むずかしい。
 なんだってそうだ。


現在から過去へ・・・最後9歳の花に戻ったところでまた最初の大人になった花の章を読み返しました。
結婚した花がこれからどんな人生を歩んでいくのか?
淳悟と離れてよかったんだろうけど・・・どうしても明るい未来が想像できず切ないです。