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2003年からの読書日記

増補新訂版 アンネの日記 (文春文庫)作者: アンネフランク,深町眞理子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/04/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 65回この商品を含むブログ (79件) を見る

アンネの日記、学校で習ったような記憶がうっすらあるくらいで通して読んだのは初めて。
日記が2種類存在していたこと(自分用と、公表を期して清書したもの)も初めて知りました。

何度も手に取ろうとはしたんですが、日記が延々続くのが退屈だったのでしょうか?機会を逃してとうとう今になってしまいました。
少しずつ、少しずつ読みました。


アンネより彼女の母親の年齢に近い私なので、つい大人目線になってしまったのがちょっと残念です。
母親についてはよく書かれている箇所がほとんどなくて(かなり辛らつ、むしろ嫌われている)かわいそうな気がしてしまいました。
性格が正反対なのもあっただろうし、親に対する思春期特有の感情なのかもしれませんが・・・娘を持つ母親としては辛いものがありました。

きっと母親自身も逃避行&隠れ家生活で疲れていたはず。
特殊な環境の中、感情の捌け口をアンネにしてしまった部分があったんでしょうね。

私が中学生くらいで読んだならアンネにもっと共感したのかも。
きっと感じ方も違っていたはず。
もう遅いけれどやっぱりアンネと同世代の時期に読みたかったと思いました。


13〜15歳までを隠れ家で過ごしたアンネ。
家族4人とファン・ダーンさん一家の3人、デュッセルさんの計8人で父親の会社の後ろの家(隠れ家)で息をひそめて怯えながら暮らす日々、どんなに苦しかっただろうと思います。

でも、心の友の日記があって本当によかった!
気持ちを吐き出すことはもちろん、じっくり内面を見つめること、考えを整理することができたことはとても大きかったはず。
不自由の多い隠れ家生活の中にもユーモアを忘れないところ、常に明るい面を見ようとするところも素晴らしいと思いました。


またアンネは精神的な強さがあり、頭が切れる賢い人物だとハッとさせられる部分がたくさんありました。
どうしても自分を見つめる機会が増える生活の中で早く大人にならざるを得なかったんでしょうが、ちょっと抜粋しただけでもこんなに・・・


>ほんとうに他人の人柄がわかるのは、そのひとと大喧嘩をしたときだということです。そのときこそ、そしてそのときはじめて、そのひとの真の人格が判断できるんです!


>どんなことがあっても、前向きに生きてみせると。涙をのんで、困難のなかに道を見いだしてみせると。


>どんな富も失われることがありえます。けれども、心の幸福は、いっときおおいかくされることはあっても、いつかはきっとよみがえってくるはずです。生きているかぎりはきっと。


>〜どんな不幸のなかにも、つねに美しいものが残っているということを発見しました。それを探す気になりさえすれば、それだけ多くの美しいもの、多くの幸福が見つかり、ひとは心の調和をとりもどすでしょう。そして幸福なひとはだれでも、ほかのひとまで幸福にしてくれます。それだけの勇気と信念を持つひとは、けっして不幸に押しつぶされたりはしないのです。


>〜良くなるのも悪くなるのも、人の心の持ちようしだいなんです。


>わたしは思うのですが、戦争の責任は、偉い人たちや政治家、資本家にだけあるのではありません。そうですとも、責任は名もない一般の人たちにもあるのです。そうでなかったら、世界じゅうの人びとがとうに立ちあがって、革命を起こしていたでしょうから。



レイマンさん、クーフレルさん、ヤンとミープ夫妻、ベップなど支援してくれる周りの人々も素晴らしいと思いました。
私はこの人達のように自分にも危険が及ぶかもしれないのに助けることができるだろうか?
8人も匿っていれば八百屋のファン・フ−フェン夫妻のようにきっと気づいていた人々もたくさんいたはず。
察していても気づかないふりをしてくれた善良な人々の存在も大きかったと思います。


それにしても日記が8月1日の時点でプツッと途切れているのが(8月4日密告により連行)あまりにあっけなくて暗い気持ちになりました。
この結果が分かってこれまで読んできたのに、一瞬で断ち切られてしまった衝撃が大きくて言葉に表せない・・・
本当に早すぎる生涯でした。


>わたしの望みは、死んでからもなお生きつづけること!

アンネの望みは結果として叶ったわけですが、生き延びた彼女がジャーナリストや作家として活躍するのを見てみたかったです。


アンネの日記が世界中で読まれ知られていること、これは本当にすごいことだと思います。
でも、歴史的意義や反戦の象徴としてあまりにも強調され、一人歩きしていっているような気もします。
もちろんそういう面も大切なんですが、戦時下の特殊な環境の中で悩みながら生きた少女の記録としてこの本を読むだけでも価値があると思います。


これから少しずつアンネ関連本、戦争に関連するものも(日本を含めて)手に取っていきたいです。