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2003年からの読書日記

たそかれ 不知の物語 (福音館創作童話シリーズ)作者: 朽木祥,山内ふじ江出版社/メーカー: 福音館書店発売日: 2006/11/30メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る

前作の『かはたれ』から4年後。
河童の八寸は不知という河童を連れ戻す命を受け、再び人間界にやってきます。
不知は月読みの一族で賢く聡明で霊力の強い河童の最後の生き残り。
人間と親しくなったことがきっかけで河童の世界から去り、学校のプールに住みついてしまったのだという。
でも、そのプールが取り壊されることになったとのこと。
八寸は不知を説得し河童の世界に連れ戻すことはできるのか?


今回は猫に変身して出かけるわけではなく、見え隠れの珠という人から姿が見えなくなる珠をお守りとして授かります。
しかしこの珠も水っぽいものや水気は隠し切れないとのこと。
雨や水に濡れるのはもちろん、用足し、くしゃみ、鼻水のたぐいも見えるので注意が必要です。
成長したとはいえやっぱり騒動を起こしてしまう八寸(笑)
でもそのおかげで突然の別れになってしまった麻とも再会できてよかったです。


麻は中学三年生になっていて絵を描くことが好きな少女に成長していました。
チェスタトンが年老いていたのが切なかったけれど、これは仕方ないですね。
小学校の時いじめられていた河井くんを助けたことが前作でも触れられていましたが、その河井くんの変貌ぶりもよかった!


不知がプールに住み着いた理由を知った時、とても胸が痛くなりました。
戦争のせいだったんですね・・・60年も友達の司を待ち続けた不知。


物語の中に巧みに織り込まれているけれど、朽木さんが子ども達に考えて欲しかったのは戦争が大きいんじゃないかと思わされました。
私も戦後生まれだし、授業で習ったり祖父母から話を聞いたことがあるくらいの知識だけれど、今の子ども達には戦争はますます遠い昔のことだと思っているはず。
日本で過去に戦争があって多くの命が失われたことがあったなんて想像もつかなかったりするんでしょうね。

麻や河井くんの知恵を借りつつ、やっと心を通わせることができた場面には涙が出そうになりました。



物語の中で紹介されている本にも興味が自然と湧いてきます。
今回はこの3冊をチェックしておこうと思いました。

スティル・ライフ池澤夏樹
『ふりだしに戻る』ジャック・フィニイ
ある日どこかでリチャード・マシスン


鎌倉在住の著者なので他の作品同様鎌倉のことがさり気なく登場します。
地元に近い方はきっとよく分かるだろうし、うれしいでしょうね。
もっともっと色々な作品を読んでみたいです。