はぴの本棚

2003年からの読書日記

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~作者: リリー・フランキー出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2005/06/28メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 445回この商品を含むブログ (1391件) を見る

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図書館でだいぶ待っていたものが回ってきました。
「すごくよかった」とか「感動する」と聞いたことがあったけれど期待しすぎると楽しめない私は逆に冷静に読むことができました。

リリーさんのことはテレビでちらっと見たことがあるくらいでイラストレーターだったり、アニメ「おでんくん」の作者くらいは知っていましたが、この小説は彼の自伝っぽい感じなのかな?
ほぼノンフィクションのような印象を受けました。

主人公のボクは物心ついた時からオカンと二人であちこちを転々としながら暮らしています。
といっても、オトンとは離婚しているのでもなくて、たまに会っている状態。
このタイトルどおり時々って感じ(笑)
でもインパクトはものすごくて、最後に別居の真相も知ることができました。

ボクの子ども時代から大人になるまでオカンが愛情たっぷりに育ててくれたのが分かります。
まさに「身を粉にして働く」「惜しみなく与える」という言葉どおり。
仕送りのお金を送って欲しいと言われれば、苦しい生活の自分はさておき送ってあげるし、たくさんの手料理でボクの友達をあたたかく迎えてくれる。
子どもが成長していく過程でちょっと重かったり、うっとうしかったりもするのですが、母親の愛情ってやっぱりあったかくて大きいんだなと思います。

日々の暮らしは本当に慎ましいものだったけれど、着るものと口に入れるものと、肌に触れるものには贅沢をしたオカンの気持ちが素敵です。

子どもが成長して親子の立場が逆になっていく展開はやっぱり少し切なくて、オカンが病気になって苦しんでいる様子は辛くて涙が出てしまいました。
でも暗いトーンばかりではなくて、どこかひょうひょうとしている文章が興味深かったです。
特にオカンの年季の入ったかくし芸には爆笑してしまいました。

会話にもたびたび登場する九州弁のおかげもあるのかな?
その土地土地の方言ってあったかい言葉ですね。
だから東京との対比がなおさら明確になっていたようにも思います。

東京には旅行で訪れたことがあるくらいだけれど、本当に人が多い印象。
たくさんの人が東京に出てくるけれど夢破れて故郷に戻って行ったり、ずっと暮らしていても、だんだん流されてしまってどこか麻痺してしまうような感じ。
本に何度も出てきた「ぐるぐるぐるぐる」という言葉がぴったりだと思いました。

自分も今は母親の立場にもなりましたが、いつかはオカンのように大きな愛情で子どもを見守ることができるようになりたいです。
もちろん自分の両親、祖父母に対してもこれまで以上に感謝の気持ちを伝えていかなければと思いました。

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わった > こんにちは。皆さんは後半が印象深いようですが、私はどうしても筑豊の町の子ども時代のお話も捨てがたいのです。前野君のお父さんが入学祝に息子と同じ時計をリリーさんに贈るところは泣けました。昔はこんな人格者が身近なところにきちんといらしたんだと感じ入りました。そして、様々なことにおおらかで優しい空気が流れていたようにも感じました。おかんが精一杯、愛情込めて育てている様子が胸を打ちます。保育料・給食費未納の親達とは大違いです!!! (2007/05/28 15:13)
さくら > 病気になってからのくだりが本当に辛くて辛くて一番印象的です。これを読むと誰でも親孝行しなくちゃいけないという気持ちにさせてくれますよね。 (2007/05/28 18:15)
トントン > わったさん、こんにちは。子ども時代のお話もよかったですよね。前野君のお父さんはとても素敵でした。時計の場面、私もとても好きなところです。自分の子ども時代のことを思い返しても、わったさんがおっしゃるようにおおらかで優しい空気が流れていたような気がします。オカンの愛情も深くてあったかかったですね。
>さくらさん、こんにちは。本当に病気の場面は辛くて涙がボロボロ流れました。この本をたくさんの方が読んだから親孝行する人が増えたかな?私ももちろん親孝行しなくちゃという気持ちになりました。 (2007/05/29 14:45)
ほっそ > こんにちは。皆さんのところで、お話しましたけど、私はオカンが死んだあとに弔問にきたお客さんのひとこと「男の子は母親が死んで、はじめて一人前なんだよ」が忘れられません。また年をとってからの息子との付き合い方など、ひたすらうらやましかったです。 (2007/05/30 09:12)
トントン > ほっそさん、おはようございます♪「男の子は母親が死んで、はじめて一人前なんだよ」という言葉、私も印象に残りました。息子さんがいらっしゃるともっと深く響きますよね。年をとってからのオカンとボクの暮らしは素敵でしたね。病気になったオカンは本当に辛かったですけど・・・ (2007/05/31 06:43)