はぴの本棚

2003年からの読書日記

ミーナの行進作者: 小川洋子,寺田順三出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2006/04/22メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (178件) を見る

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図書館で予約していた順番がやっとまわってきました。
なるべく予備知識は入れずに読もうと思っていましたが、皆さんの感想や当時テレビで見た著者のインタビュー、書評などでカバに乗って学校に通う少女、フレッシーという飲み物、芦屋の洋館の物語・・・くらいは頭に入っていました。
実際読んでみたらとてもよかったです。

時代はミュンヘンオリンピックのあった頃、1972年。
主人公の朋子が伯母家族のいる芦屋の洋館で下宿する1年間の物語を回想して語っています。
そこで出会うのが伯父、伯母、ドイツ人のローザおばあさん、一つ年下のミーナ(美奈子)、住み込みのお手伝い米田さん、庭師の小林さんなど皆個性あふれた人達です。

そしてカバ(コビトカバ)もちゃんと家族の一員なのが素敵。
普段は気ままに庭をさまよったり、池で過ごすんですが、体が弱いミーナが学校まで通う乗り物にもなってくれます。
しぐさもどことなくユーモラスで(実際見たことないんですが)かわいらしいなと思ってしまいました。

芦屋で過ごす1年は充実したすごく濃い時間だったんだなと思います。
ミーナと光線浴室に何度も入ったこと、オリンピックで男子バレーに熱中した日々、ジャコビニ流星雨、お互いの恋、ミーナの兄(留学中)龍一の一時帰国、クリスマスパーティー・・・など私が生まれる前なのに、当時はこんな感じだったのかなと読んでいて一緒に1972年を過ごした気分になりました。
もちろん楽しいことばかりではなく、悲しい出来事もありますが通して読むと懐かしいようなあたたかい気持ちになっている私がいました。

ミーナの作るマッチ箱のお話もとてもよかったです。
「シーソー象の話」
「三日月に腰掛ける二匹のタツノオトシゴの話」
「羽を繕う天使の話」
「流れ星を集めたガラス瓶に栓をする少女の話」
繊細だったり、ちょっと残酷だったり、優しいお話だったり、色々な要素が盛り込まれていてマッチ箱が夢の箱のように思えました。
寺田順三さんの挿画も小説にぴったりで素晴らしかったです。

最後には大人になった二人の手紙のやりとりもあり、その後が書かれていてよかったなあと思いました。

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あしか > 数ヶ月前に、小川さんのエッセイ「犬のしっぽを撫でながら」を読んだんですが、それを読むと、こういう作品のバックグラウンドみたいなものが見えた気がして、面白かったです。小川さんのお母さんが、米田さんの投影なんじゃないかという気がしてくるんですよね。すごく馬鹿な犬のラブラドールレトリバー(一般的には賢い犬として有名なのに)などの事も書いてあるんですが、このカバのほうがずっとお利口なんですよね。挿絵は素敵ですよね。あんまり欲しい本というのにめぐり合う事はないですが、これは出来れば手元においておきたいくらい素敵な本でした。 (2007/05/03 16:08)
ほっそ > こんにちは。あしかさんに同感です。挿絵がきれいで、本の中の時間がゆっくり流れていくのでした。さらに「ミュンヘンへの道」の記憶も鮮明な私・・・子供のころの記憶がぱ〜〜〜っとよみがえりました。 (2007/05/03 18:22)
まゆ > この物語、いろんなものがぎゅうっと詰め込まれているのに、全然煩雑な感じがしないですよね。それがすごいです。そして、何よりも物語の着地点がよかったです。 (2007/05/04 18:15)
トントン > あしかさん、こんばんは。手元においておきたい素敵な本、同感です。挿絵も物語にぴったりでした。なるほど・・・エッセイを読むとより楽しめそうな感じですね。小川さんのお母さんが米田さんの投影かもしれないというのは興味深いです。お馬鹿なラブラドールも可笑しいですね!
>ほっそさんは「ミュンヘンへの道」の頃の記憶がちゃんと残ってるんですね。より物語が楽しめそうでうらやましい!本の中の時間がゆっくり・・・本当にそうだなと思いました。
>まゆさん、そうそうたくさんの出来事が詰め込まれているのにすーっと読めたのは改めて考えるとすごいことなんですよね!着地点もよかったですね。あたたかい気持ちで読み終わることができました。 (2007/05/04 20:00)