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2003年からの読書日記

この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)作者: 角田光代出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2005/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (129件) を見る

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本プロで高評価だったこの本!
図書館で予約していたのが早く届いてよかったです。
最近気に入った文章に付箋を貼るようになったのですが、この本にもあちこちに付箋がつきました。

角田さんの作品は都会的で乾いた文章というイメージで、変わった家族が出てくる印象が強かったのですが、(あまり数を読んでいないので偉そうに言えませんが)これはまた違う感じでした。
本への思いや愛情が感じられて、優しくあったかい印象が強かったです。
どの短編も上手に本がリンクしています。
短編ごとに書き方(段落や行間を変えている)のが不思議だったのですが、これは短編一人ひとりの主人公が違うことを印象づけたかったのでしょうか?
短編集って一つは苦手なのがありそうなのに、どれも心に残るのはさすがだと思いました。

それでもちょっと気になった部分がありました。
ミツザワ書店のところで、主人公が万引きするのですが、自分が以前書店で働いていて、万引きを摘発したこともあるので、「主人公が小説家になったからよかった」とか「お金を返したからよかった」とどうしても思えなかったのが残念。
短編自体すごくよかったし、ミツザワ書店のおばあちゃんも素敵で、小説の中の話ということは分かっているのですが・・・

最後のエッセイは読んでいて、うなずくことばかりでした。
星の王子さま』の経験から、面白いと思えない本を読んでも「つまらない」と決めつけなくなった角田さん。

>「つまらない、と片づけてしまうのは、すでに存在している本に対して、失礼である。」

年月を経て再読したら違う印象を持つ可能性は大なんですよね。
以前、よさが分からなかった本が大切な一冊になるかもしれない。
歳を重ねることで経験が増え、人付き合いや環境も変わっていくことで、読む時の心境も違うだろうし、心に残る内容も変わっていく・・・
そう思うと読書の楽しみがぐっと増えるような気がします。

以前は一度挫折したり面白いと思えなかった著者の作品は避けていましたが、それではもったいないと思うようになりました。
最近ゆきみ大福さんの書評で『朗読者』を再読してみようと思うきっかけになったのは、ちょうど私に今がちょうどいい時期ですよ!読んでみたら?と本が呼んでいるのかもしれないと思いました。

「そう、本は人を呼ぶのだ」
角田さんのこの作品もきっと私を呼んでいたんでしょうね。
本プロでお世話になるようになって自分の読書の幅が広がったし、本に呼ばれる回数もかなり増えたような気がします。
一生に読める本の数は出版される圧倒的数の本の一部。
本の声を聞き逃さないように、そして自分にとって大切な本との出合いがますます増えますように・・・

皆さんの感想をこれからじっくり読ませてもらいますね。

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ぱせり > トントンさん、おはようございます。わたしはこの本が始めての角田さんでした。(はるか昔に「キッドナップツアー」を読んだことがあるにはあるのですが、すっかり忘れてるし…)最初にこの本を読んでしまった場合、もしかしたらわたし、ほかの角田作品は読めないんじゃないか、と思ったりしています。
本屋さんでの万引きの話、本屋さん側の立場、そういえばわたしは考えたこともなかったです。トントンさんの話はすごく新鮮でした。「〜したからよかった」というのとは違いますよね、それは別件ですよね。それを違和感を感じずに受け入れていた自分にきがつきました。「ミツザワ書店」の話は大好きなんですけど。
 >つまらない、と片づけてしまうのは、すでに存在している本に対して、失礼である。
ズキンときますよね。好き勝手に感想書いていますから。そうか、新たな出会いを楽しみにして、お蔵にしまおう。(でも正直箸にも棒にも引っかからない本も…稀にありますよね…と小さな声で…)
本の良さを再確認してしまう本でした。出会えてよかった。 (2005/08/31 06:11)
ゆきみ大福 > おはようございます。この本から「本の声を聞く」という本への新たな向き合い方を教えてもらった気がします。読みたい読みたいという欲求だけでなく、「読み時」を大切に敏感になっていきたいなと思いました。「朗読者」は、ぱせりさんに導かれやはり本に呼ばれたのだと思いたいです。トントンさんが聞いた「朗読者」の声、私もなんだか嬉しいです。 (2005/08/31 09:21)
すもも > トントンさんの本屋さん側から読んだ「ミツザワ書店」。一番好きな物語なのですが、なにかが、ひっかかる・・・。なるほど〜、トントンさんの日記ですっきりしました。 (2005/08/31 11:09)
ミワ > トントンさん、読まれたんですね!この本の感想がアップされるたびにあの興奮を思い出してしまいます。
「ミツザワ書店」のお話のトントンさんの感想、わたしも新鮮でした。確かにそうですよね。万引きですもんね、だめなものはだめ。トントンさん、書店で働いてらしたことがあるんですね!わたしも一度だけでも書店で働いてみたいなぁといまだに夢見てます。
本に呼ばれること、この本を読んでから「あのとき呼ばれてたんだ!」って思いあたることがどんどん出てきて・・・。わたしも「本の声」を聞き逃さないようにしていきたいなと思いました。 (2005/08/31 21:16)
トントン > ぱせりさん、こんばんは。私はこれが3冊目の角田さんなのですが、他の作品達とは違う雰囲気を感じました。別の作品を読んだら戸惑うかもしれないけれど、ぱせりさんの感想をもっと聞きたい気もしますね♪
万引きの話はおばあちゃんの言葉がすごく素敵だった分、余計に違和感を感じてしまって。話の中とは分かっているんですけど。それだけ角田さんの物語が深く入ってきたということになるんでしょうね。
箸にも棒にも引っかからない本・・・フフフ、私ももちろんありますよ(私も小さい声で言いますが)縁がなかったというしかないんでしょうね。この本を読んで今まで以上に本との新たな出会いが楽しみになりました。
ゆきみ大福さん、こんばんは。さっき感想を読ませてもらってきました。朗読してみると新たに発見することもあるんですね。涙が出るほど・・・すごいなあと思いました。黙読では分からない感動があったんでしょうね。あとゆきみ大福さんのおっしゃる「読み時」って大切だなって思います。つい読みたい読みたいってノルマみたいになっちゃうんですけど、「読み時」にもっと敏感になりたいですよね。『朗読者』の再読いつになるか分かりませんが、すごく楽しみになってきましたよ。きっかけを与えてくださったゆきみ大福さんに感謝です。
すももさん、みなさんの感想で「ミツザワ書店」が好きというのを何度も目にしていたので、こういう感想を書くのは勇気がいったんです。気にしないでいればなんてことないんでしょうけど、「なんか違うんじゃないか?」って思って。すももさんがすっきりしてくれただけでも書いてよかったです。 (2005/08/31 21:38)
トントン > ミワさん、ちょうど来てくださってたんですね!私もこれからこの本がUPされるたびに興奮しながら読むんだろうなって想像してます。書店で働いていたのは3年くらいなんですよ。でも、最初から大好きな児童書の担当で大変だったけど充実してたんです。働くのもいいけどお客さんが一番楽しくていいなあって今は思うんですけどね(笑)働いていた頃はよく万引き対策の練習もしてたので余計に気になっちゃいました。「本の声」にもっともっと敏感になって聞き逃さないようにいたいですね。 (2005/08/31 21:45)
たばぞう > 遂に読まれましたか!。トントンさんも楽しまれたようで良かったです。私は欲張りで次から次へと未読の本を読みたいタイプなため、ほとんど再読はしないのですが。そんな中で「星の王子さま」は小学生の頃から何度も読んでいる本のひとつです。最初は「?」だったものが、大人になるごとにそこに書かれていることの意味がだんだんわかってきたのです。最近池澤夏樹さんによる新訳が出たので、どんなふうに感じるか、また再読するのが楽しみです。 (2005/09/10 13:47)
トントン > たばぞうさん、私もやっと読めましたよ!本プロの皆さんの評判どおりとてもよかったです♪私も次々と未読の本を読みたいタイプなんですが、最近ゆっくりじっくり読みたくなってきました。たばぞうさんにとって「星の王子さま」はとても大切な本なんですね。私はだいぶ前に挫折してから最後まで読めていないんですよ。
>大人になるごとにそこに書かれていることの意味がだんだんわかってきたのです。
とても素敵な読書ですね。新訳も出たことだし、私もまた挑戦してみたいです。 (2005/09/11 21:12)