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2003年からの読書日記

千年の黙―異本源氏物語作者: 森谷明子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2003/10メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (31件) を見る

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第13回鮎川哲也賞受賞作ということです。
上下段の厚い本ですがとても面白く、夢中で読んでしまいました。

第一部 上にさぶらふ御猫
第二部 かかやく日の宮 
第三部 雲隠

語り手は紫式部(御主)に仕えるあてき。
第一部から第三部まで時代が下っていきます。
清少納言左大臣藤原道長も登場します。

中でも紫式部がとても魅力的に描かれています。
教養があり、頭の回転も速く賢い女性。
猫探しの推理や消えた幻の巻の謎も興味深く、楽しく読めました。

現代の私達でもよく知っている源氏物語ですが、とほうもなく長い時を超えて伝わってきたというのがよく分かりました。
ずっと読み継がれる物語は、人をひきつける魅力があるんでしょうね。

当時はコピーもファックスも印刷技術もない時代で、伝達するのは原本を多くの人が写本して少しずつ広げていくしかない。
でも、たくさんの手が入るうちに最初とは違ったものになる怖さもある・・・

印象に残った紫式部の言葉を引用しておきます。
「言いたい人には言わせるしかない。ものを書く者は、その結果を全部引き受ける覚悟でいなければね。」

「この世の何もかもをお持ちの大臣様も、人の心だけは自由におできにならないと。
わたくしの書く物語の世界はわたくしのもの、あなた様でもお手は出せない、と」

これらは作家である森谷さん自身が思っている言葉にも聞こえました。


源氏物語に挑戦しようと思いつつ、長さに圧倒されて手が出せずにきましたが、今度こそ現代語訳から読みたいと思います。
気になっているのは瀬戸内寂聴さんのと田辺聖子さんのもの。
これ以外にも現代語訳のおすすめがあれば、教えてくださるとうれしいです。

あと丸谷才一さんの『輝く日の宮』も読んでみたくなりました。



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ココ > 紫式部は本当に魅力的でしたね。最初の猫探しは、次に続く物語への案内所としても読みやすくてよかったと思います。『輝く日の宮』は、この本と少し解釈が違って、また面白いですよ〜。 (2005/08/03 23:59)
ぱせり > おもしろかったです〜♪
「この世のなにもかもをお持ちの…」の台詞、森谷さん自身の思い、ああ、確かに確かに♪平安時代のホームコメディみたいな感じなのに、終わりのあのしっとりと余韻の残る感じもよかったです。 (2005/08/04 08:00)
すもも > この本を教えてくれた、本プロさまに感謝です。源氏物語がとても身近になったような気がしました。トントンさんの抜粋された部分は、わたしも森谷さん自身の言葉と受け取りました。 (2005/08/04 09:25)
ときわ姫 > 素敵な物語でしたね。きっと森谷さんは源氏物語が好きなんでしょうね。作家として、紫式部にあこがれを持っているのかなと思いました。 (2005/08/04 09:40)
まゆ > 物語を書く人の思いが伝わってきて、よかったです・・・。紫式部の。それから、森谷さんの。これ読んだ後、無性に「源氏物語」読みたくなりました(読んでないけど)。 (2005/08/04 20:28)
トントン > たくさんのレス、ありがとうございます♪この本の人気が分かりますね。
ココさん、猫探しは全部読み終わってから考えるとたしかに次への導入って感じでしたよね。源氏物語に詳しくない私でも読みやすかったです。『輝く日の宮』は解釈が違うんですか!ぜひ読んでみますね。
ぱせりさん、なるほど平安時代のホームコメディとは・・・まさにそんな感じでした。終わり方もすごくよかったですね!
すももさん、私も本プロにいなかったら森谷さんの名前を知らずにいたと思います。紫式部に言わせたセリフですが、森谷さん他、作家なら持ってしまう思いかもしれないですね。
ときわ姫さん、『れんげ野原〜』もよかったけれどこちらの方がすごく好みだったんですよ。ときわ姫さんがおっしゃるように森谷さんは源氏物語がすごくお好きなんでしょうね。ちょっと話はずれますが、ときわ姫さんにどうしても言いたくて^^私も『空色勾玉』『白鳥異伝』をほぼ半額で手に入れました。うれしかったのでこちらで報告させてもらいますね♪
まゆさん、私も読みながら、「物語を書く人ってこんな気持ちなのかな」って思いました。源氏物語、ずっと読めずに来ましたがこれを機に挑戦してみたいです。 (2005/08/05 23:34)