はぴの本棚

2003年からの読書日記

アースシーの風 ― ゲド戦記V作者: アーシュラ・K・ル=グウィン,ディビット・ワイヤット,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2003/03/21メディア: 単行本 クリック: 36回この商品を含むブログ (60件) を見る

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ゲド戦記、とうとう最終巻になりました。
ここまで読んできて本当によかった!
ぐいぐい引っ張られて最後はほ〜っと満足のため息が出た感じでしょうか。
(読み終わった後はまさに訳者の清水さんの気持ちと全く一緒でした)
1巻から考えるとどの巻もそれぞれ特色があり堪能しました。
ゲド戦記の旅がこれで終わってしまうのは寂しいけれど、いい余韻を残しつつ本を閉じることができました。


今回新たに登場するのはハンノキという男性。
愛する妻を亡くした後、夢を見る度に妻のいる生と死の境界の石垣へ引き寄せられるようになります。
そこはかつてゲドや現在の王であるレバンネンがかつて訪れた場所。
魔法使いほどの力はないまじない師の彼がなぜ生と死の境界まで行けるのか?
夢に悩まされるハンノキは救いを求めゲドのところにやってきます。


『外伝』で登場したアイリアン(オーム・アイリアン)やテハヌーのその後も語られます。
今回どういう結末になるのかとても気になっていましたが、多くの変化があったものの落ち着くところに落ち着いたという感じでしょうか。


カルガド人の王女セセラクの登場も興味深かったです。
言語や文化、考え方の違うところに急に連れて来られて戸惑うのは当然だったはずですが、それでも同じカルガド人のテナーに支えられ、少しずつ新たな世界になじんでいこうとする姿勢は好感が持てました。
凛としているたたずまいも素敵で、こういう結末になるのは時間の問題だと予想できたとはいえよかったです。
逆に王の頑なさや戸惑う様子が面白く彼の心の変化を楽しみながら読みました。


ゲドシリーズは、生と死、愛や友情、所有と自由の問題、文化、ジェンダーなど色々な要素が織り込まれていました。
ファンタジーとして十分楽しめるのはもちろん、読んでじっくり考えさせられることのできる物語と出合えたこと、本当に幸せだと思います。
以前購入していたゲドの関連本も少しあるので、また落ち着いたら読んでみたいです。
いつかの再読も楽しみに・・・長い旅でしたが充実したいい読書ができました。


あとがきにありましたが、ミヒャエル・エンデの『モモ』も『影との戦い』と同じ年に日本で出版されたというのも興味深いです。
こちらも子どもの頃読んだきりなのでまた手に取ってみたくなりました。