Bolero―世界でいちばん幸せな屋上 (ミルリトン探偵局シリーズ 2)作者: 吉田音出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2000/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (24件) を見る
『Think 夜に猫が身をひそめるところ 』『Bolero 世界でいちばん幸せな屋上 』と間を空けずに読めたのでまとめて感想をUPします。
著者はクラフトエヴィング商會の吉田篤弘、浩美夫妻を両親に持つ4代目。
物語の主人公でもある1986年生まれの吉田音(おん)ちゃんは中学生です。
大人びた物言いがあるかと思うと、まだまだ子どもの部分もあったりでアンバランスな感じがとてもかわいらしい。
この本が出版されたのが13歳の時ということになるんですよね。すごい!
ミルリトン探偵局とは・・・
黒猫のシンクが拾ってきたおみやげ(16個の青いボタン、小さな鳥の羽、釘、謎の白い粉など)からああでもない、こうでもないと推理する円田さんと音ちゃんが名づけた探偵局で
>解ける謎でも、決して解かない。
謎を解かない探偵局って何?と思ってしまいますが、この名前に使われている幻のお菓子ミルリトンが鍵になっています。
このミルリトンにちなんでつけたネーミングがとてもユニークでお洒落。
でも、食いしん坊の私が最初に思ったのは・・・どんな味か食べてみたい(笑)
他にも魅力的な場所がいっぱい。
「カフェ・ボレロ」でコーヒーを飲みながら心地よい音楽に浸りつつゆっくり読書もしてみたいし、「フレンチ・ホルン奏者」のいるオーケストラの演奏を聴いてみたい。
それに「アンジェリーナ」のピザも味わってみたいし、深夜に放送されるラジオ番組「ルーフトップ・パラダイス」も聴いてみたい・・・
本の中に入れたらどんなにいいだろうと想像してしまいました。
ミルリトン探偵局の話とは別に進行する物語も素敵でした。
シンクの持ち帰ったもおみやげがどこからやってきたのか明らかになるのもうれしいし、(でも残っている謎もある)
一見バラバラに思える登場人物達がいつの間にかリンクしていて最後につながっていくのもうまいと思いました。
音ちゃんの周りにいる大人達は一風変わっているんですが、とても魅力的。
両親の吉田夫妻をはじめ、円田さんなど遊び心のある大人の存在ってなかなかいないような気がします。
あと物語の中で何度も「考える」という言葉が出てきて印象に残りました。
答えが出なくてもいい、間違ってもいい、考えることが大事。
そしてその過程を楽しむことも・・・と私なりに解釈しました。
これは猫好きにはたまらない物語でしょうね。
猫って自由気ままでわがままな印象がありますが、ファンタジーや魔法にもよく登場するちょっと謎めいた存在だと思います。
「猫だけが行ける場所」ってやっぱりあるんじゃないかな?
この物語のようにもしかしたら時間までも超えることができるのかもしれません。
クラフトエヴィング商會の本はどこまでが現実でどこからか創作なのか毎回分からなくなってしまう私ですが、心地よい騙され感がけっこう好みだったりします。
異国風でちょっと不思議、独特なところはいしいしんじさんの世界と似ているような。
最後の「ボレロ」では2冊目のタイトル『世界でいちばん幸せな屋上』にふさわしくほんのり幸せな気持ちになって本を閉じることができました。
またいつか音ちゃんの物語と出合えたらうれしいなと思います。