カゲロボ
いつも、誰かに見られている……。
最初は他愛のない都市伝説の筈だった。
しかし、イジメに遭う中学生、周囲から認知症を疑われる老人、ホスピスに入った患者、殺人を犯そうとする中年女性など、人生の危機に面した彼らの前に、突然現れた「それ」が語ったことは。
いま最注目の作家が描いた、ささやかな「罪」と「赦し」をめぐる傑作。
『昨夜のカレー、明日のパン』『さざなみのよる』もよかったけれど、今回の『カゲロボ』も楽しめました。
SFっぽい感じでドキドキしながら読み始めましたが、とても面白かったです。
将来ありえる話のような気もするし、知らないだけでもうそうなっていても不思議じゃないような・・・
自分が見たくない心のちょっと暗い部分、隠しておきたい気持ちなどが読んでいるとぬるっと出てくる感じ。
怖い部分もあるけれど、読まずにいられない魅力があるし、読み終わると私も登場人物達と同じように赦されているような気持ちになるのも不思議でした。
新作が出ると読まずにいられない作家は何人かいますが、木皿さんもその一人。
多くの小説がある中、そんな作家に出会えたことはとても幸せだと感じました。
読了後、新潮社のHPで「作家自作を語る」を聞きましたが、さらにファンになりました。
これからも木皿作品を楽しみに待ちたいと思います。